これが本当の「聴く力」妙法蓮華経観世音菩薩普門品③

佛告 無盡意菩薩 善男子 若有無量百千萬億衆生 受諸苦惱 聞是観世音菩薩 一心稱名 観世音菩薩 即時観其音聲 皆得解脱

佛 無盡意菩薩に告げたもう 善男子 若し無量百千万億の衆生が有りて 諸々の苦悩を受くとも 是の観世音菩薩を聞き 一心に観世音菩薩の名を称えれば 観世音菩薩 即時に其の音声を観じ 皆解脱することを得。

 お釈迦さまは無尽意菩薩に答えられます。

「教えを信じ修行に励む善男子(無尽意菩薩)よ。もし、数えきれないほどの人々が、いろいろな苦しみや悩みを持ったとしても、一心に観世音菩薩のお名前を呼べば、すぐにその声を聴いて皆を救ってくださるのです。」

『観世音』という三文字は

①観…一般的には目で見ることを指しますが、ここでは感じること、受け止めることとします。

②世…世界。この世。

③音…音声、声。ここでは苦しみの中で救いを求める人々の声。

以上をまとめると、「この世の苦しみの中にいる人々の、救いを求める声を聴く」菩薩ということになります。

このお名前は個人的にとても有難いものだと考えています。

自分が困っているとき、救いを求める自分の声が果たして救い主にきちんと届いているか。これは大きな問題です。この経典が成立した2000年ほど前の世界は、現代よりもずっと生きること(文字通り「生きる」こと)が困難だったことでしょう。当然、救いを求める声も切実になり、その声が届いているかどうかは重要な点となります。

あらためて「観世音菩薩」というお名前を読み下すと、「世の音を観ずる菩薩」となります。大切なのは、この「観ずる」というのが主体的な行動ということです。世間の人々のSOSの声が大きいから聞こえてしまった、という受け身の姿勢ではありません。世界のすみっこの、どんな小さな震え声も耳に受け止めようという強い意思があります。

ここに観世音菩薩が仏教界の中で圧倒的に信仰を集める存在である理由を見ることができます。観世音菩薩は助けを求める声を無条件で聞き取ろうとします。人々を救いたいと耳をすませているわけです。そういった姿勢を名前に冠した観音さまは、『誰一人として取り残さない』世界を目指す大乗仏教の考えを体現する存在と言えるでしょう。

さあ、お釈迦さまの説明により、観音さまのお名前の由来が明らかにされました。次回は、観世音菩薩の持つ力をお釈迦さまが説明されます。


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